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2017/04/16

8586 リワークステーションの100V化改造

中華リワークステーションの8586を100V電源に最適化する改造を行いました。

注意

ここでは電子工作でも比較的高圧な100V電源を扱います。作業を行う場合は安全等に十分に気をつけて行ってください。

8586とは

中国製のはんだごて+ホットエアーのリワークステーションとして有名なのが8586という型番が付いているものがあります。 似たようなものが様々なブランドを付けて出ていますが、YouyueやAttenのものがメジャーかと思います。 価格は$50~程度です。

ちなみに、ホットエアーのみのモデルは858Dという型番のものが有名です。

8586の電源について

8586は様々なブランドのものが存在するため、中身の構造もブランドごとに異なっているようです。 ここでは2017年3月に入手したYouyueブランドの8586(110Vモデル)を対象としています。

8586の電源は、トランスを使用して商用電源を3種類の電圧に変圧することで得ています。 トランスに書かれている定格は、一次側が110V、二次側が25V・28V・10.5Vです。

ここで、トランスを使用した交流電源の変圧について思い出してみましょう。 理想的なトランスにおいて、入力側である一次側の電圧とコイルの巻き数をそれぞれ\(V_1\)、\(N_1\)と、出力側である二次側の電圧とコイルの巻き数を\(V_2\)、\(N_2\)とした場合に成立する関係は以下のようになります。

\[\begin{align*} \frac{V_1}{V_2} = \frac{N_1}{N_2} \end{align*}\]

つまり、一次側と二次側の電圧の比率はコイルの巻き数の比率と等しくなります。

ここでは100V化改造を一次側の巻き数を減らすことで行うため、一次側のコイルの巻き数を知っておく必要があります。 トランスに書かれている定格電圧を信用するのであれば以下の式を用いて、二次側のコイルの巻き数から一次側のコイルの巻き数を求めることができます。

\[\begin{align*} N_1 = \frac{V_1}{V_2} N_2 \end{align*}\]

なぜこのようなことをするのかというと、一次側のコイルは巻き数が多く巻き数を数えたり再び巻き直すのに時間がかかってしまうためです。

ちなみに、そのままの状態で100V電源に接続しても正常に動作しますが、二次側の電圧が定格の9割程度になってしまうためパワー等が不足する可能性があります。

コイルの巻き数の調査と改造

まず最初にトランスを分解する必要があります。 分解の手順はトランスの改造方法を解説しているページがあるので、ここを参考にします。

外側のカバーを外し、鉄心を構成しているプレートを外していくことでコイルが巻かれているボビンのみにします。 最初のE型のプレートを外すのは金槌が必要な程度にはきちんと付いていました。

8586の二次側のコイルは3種類ありますが、どれかひとつの巻き数が分かれば大丈夫です。 ここでは一番外しやすかった10.5Vの系統のコイルの巻き数を数えました。 間違えて数えるのを防ぐために、メモを取ったり1周の起点に印を付けたりすると良いと思います。

コイルの巻き数を数えると、59回巻かれていることが分かりました。ここから以下の計算を行い一次側のコイルの巻き数を求めます。

\[\begin{align*} N_1 = \frac{110}{10.5} \times 59 = 618.095 \cdots \end{align*}\]

次に、一次側に100Vを入力した際に二次側に10.5Vが出力されるような巻き数を求め、何回コイルをほどけば良いかを計算します。

\[\begin{align*} N_1 = \frac{100}{10.5} \times 59 = 561.90 \cdots \end{align*}\]

よってほどく回数は\(618.095 - 561.90 = 56.195\)(回)となります。 求まった結果より、一次側のコイルを56回と少し(0.195の部分)ほどきます。 ほどきすぎると二次側の電圧が定格よりも上がってしまうので注意してください。

その後、元通りに配線を戻せば完了です。 テスターで二次側の電圧が正常に出ているかをチェックしておくと良いと思います。 無負荷時は若干電圧が高く出る場合があるので定格よりも過度に高すぎないかをチェックする程度にしました。

最後に

スイッチング電源であれば幅広い電圧範囲に対応しているのでこのような面倒な作業は不要なのですが、トランスで変圧しているタイプだとこのような改造が必要になります。 あと、所望のトランスを探して買うより改造した方が手っ取り早いこともわかりました。

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NV

気づいたら組み込みセキュリティをやっているエンジニア

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